企業会計原則とは、企業の会計実務や公認会計士の財務諸表監査における会計処理の規範です。一般原則、損益計算書原則、及び貸借対照表原則などから構成されます。
決算書(財務諸表)の作成において、会社独自の項目や内容などにならないように、日本会計基準において守るべきルールとされています。
1949年、企業会計制度対策調査会(現在の企業会計審議会)が、慣習となっていたものの中から一般に公正・妥当と認められる方法を要約し、企業会計原則として設定しました。その後、数次の改訂を経て、企業会計の実践規範ならびに指導原理として利用されています。
企業会計原則は法律ではなく、罰則もありませんが、すべての企業が従うべき基準である旨が明記されています。
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企業会計原則を構成する3つの要素
企業会計原則には、3つの要素(1.一般原則、2.損益計算書原則、3.貸借対照表原則)があります。
「一般原則」は、損益計算書原則と貸借対照表原則のいずれにも共通する最高規範と位置付けられています。
一般原則を構成する7つの原則
真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
真実性の原則は、作成される財務諸表が客観的な取引事実に基づいており、不正や改竄のないものであることを要請する原則です。
真実性の原則は、他の一般原則及び損益計算書原則、貸借対照表原則にも適用されます。つまり、企業会計原則に準拠して作成された財務諸表の会計情報を真実であると判断されるということです。
そのため、真実性の原則は、企業会計原則の中で最も重要な原則であると考えられています。
正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
正規の簿記の原則は、すべての取引において、一定の要件に従った正確な会計処理と、正しい会計帳簿の作成を要請する原則です。下記の要素を備えている必要があります。
- 網羅性 :取引が漏れなく記載されていること
- 検証可能性:領収書などで客観的に立証できること
- 秩序性 :継続的に同一の処理をしていること
資本取引・損益取引区分の原則
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
資本・利益区別の原則は、資本取引と損益取引の区別を要請する原則です。資本取引と損益取引を混在させると、利益を操作することができてしまうので、企業の財政状態・経営成績などが適正に示されなくなります。これを防止するために、資本取引・損益取引を区別する必要があります。
明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
明瞭性の原則は、利害関係者が企業の財政状態や経営成績を正しく把握し理解できるように、明瞭な表示や詳細な情報を注記するなど、わかりやすい財務諸表の作成を要請する原則です。
総額主義に基づいて、主な取引は相殺せずにすべて総額で記載し、取引規模を明瞭にします。費用・収益の対応表示では、各区分を明瞭にすることが求められます。
継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
継続性の原則は、一度採用した会計処理や手続きの方法は毎期継続して使用し、理由なく変更しないことを要請する原則です。これは、期間比較可能性の確保と利益操作の排除を目的としています。
企業会計原則では2つ以上の会計処理方法が認められているケースがありますが、期間ごとに処理方法が異なると、比較が困難になってしまいます。継続して同じ会計処理を行うことで、期間ごとの比較がしやすいほか、不正な利益操作の防止にも役立ちます。
保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
保守主義の原則は、企業財務の安全性を確保するため、企業にとってのリスクが予測できる場合には、それを考慮した会計処理を要請する原則です。具体的には、下記のようなことが求められます。
- 収益は確実なものだけ計上する
- 費用は早めに計上する
- 利益について過大に表示しない
単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
単一性の原則は、いわゆる二重帳簿の作成禁止を要請する原則です。
異なる目的のために形式の違う財務諸表を作成する場合であっても、元となる正しい会計記録から作成する必要があります。単一性が守られることにより、利益操作や、情報秘匿を防ぐことができます。