農地法 第四章 遊休農地に関する措置

第四章 遊休農地に関する措置

利用状況調査

第三十条 農業委員会は、農林水産省令で定めるところにより、毎年一回、その区域内にある農地の利用の状況についての調査(以下「利用状況調査」という。)を行わなければならない。

 農業委員会は、必要があると認めるときは、いつでも利用状況調査を行うことができる。

農業委員会に対する申出

第三十一条 次に掲げる者は、次条第一項各号のいずれかに該当する農地があると認めるときは、その旨を農業委員会に申し出て適切な措置を講ずべきことを求めることができる。

 その農地の存する市町村の区域の全部又は一部をその地区の全部又は一部とする農業協同組合、土地改良区その他の農林水産省令で定める農業者の組織する団体

 その農地の周辺の地域において農業を営む者(その農地によつてその者の営農条件に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるものに限る。)

 農地中間管理機構

 農業委員会は、前項の規定による申出があつたときは、当該農地についての利用状況調査その他適切な措置を講じなければならない。

利用意向調査

第三十二条 農業委員会は、第三十条の規定による利用状況調査の結果、次の各号のいずれかに該当する農地があるときは、農林水産省令で定めるところにより、その農地の所有者(その農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その者。以下「所有者等」という。)に対し、その農地の農業上の利用の意向についての調査(以下「利用意向調査」という。)を行うものとする。

 現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地

 その農業上の利用の程度がその周辺の地域における農地の利用の程度に比し著しく劣つていると認められる農地(前号に掲げる農地を除く。)

 前項の場合において、その農地(その農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その権利)が数人の共有に係るものであつて、かつ、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなおその農地の所有者等の一部を確知することができないときは、農業委員会は、その農地の所有者等で知れているものの持分が二分の一を超えるときに限り、その農地の所有者等で知れているものに対し、同項の規定による利用意向調査を行うものとする。

 農業委員会は、第三十条の規定による利用状況調査の結果、第一項各号のいずれかに該当する農地がある場合において、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなおその農地の所有者等(その農地(その農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その権利)が数人の共有に係る場合には、その農地又は権利について二分の一を超える持分を有する者。第一号、第五十三条第一項及び第五十五条第二項において同じ。)を確知することができないときは、次に掲げる事項を公示するものとする。この場合において、その農地(その農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その権利)が数人の共有に係るものであつて、かつ、その農地の所有者等で知れているものがあるときは、その者にその旨を通知するものとする。

 その農地の所有者等を確知できない旨

 その農地の所在、地番、地目及び面積並びにその農地が第一項各号のいずれに該当するかの別

 その農地の所有者等は、公示の日から起算して二月以内に、農林水産省令で定めるところにより、その権原を証する書面を添えて、農業委員会に申し出るべき旨

 その他農林水産省令で定める事項

 前項第三号に規定する期間内に同項の規定による公示に係る農地の所有者等から同号の規定による申出があつたときは、農業委員会は、その者に対し、第一項の規定による利用意向調査を行うものとする。

 前項の場合において、その農地(その農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その権利)が数人の共有に係るものであるときは、農業委員会は、第三項第三号の規定による申出の結果、その農地の所有者等で知れているものの持分が二分の一を超えるときに限り、その農地の所有者等で知れているものに対し、第一項の規定による利用意向調査を行うものとする。

 前各項の規定は、第四条第一項又は第五条第一項の許可に係る農地その他農林水産省令で定める農地については、適用しない。

第三十三条 農業委員会は、耕作の事業に従事する者が不在となり、又は不在となることが確実と認められるものとして農林水産省令で定める農地があるときは、その農地の所有者等に対し、利用意向調査を行うものとする。

 前条第二項から第五項までの規定は、前項に規定する農地がある場合について準用する。この場合において、同条第二項中「前項」とあるのは「次条第一項」と、同条第三項第二号中「面積並びにその農地が第一項各号のいずれに該当するかの別」とあるのは「面積」と、同条第四項及び第五項中「第一項」とあるのは「次条第一項」と読み替えるものとする。

 前二項の規定は、第四条第一項又は第五条第一項の許可に係る農地その他農林水産省令で定める農地については、適用しない。

農地の利用関係の調整

第三十四条 農業委員会は、第三十二条第一項又は前条第一項の規定による利用意向調査を行つたときは、これらの利用意向調査に係る農地の所有者等から表明されたその農地の農業上の利用の意向についての意思の内容を勘案しつつ、その農地の農業上の利用の増進が図られるよう必要なあつせんその他農地の利用関係の調整を行うものとする。

農地中間管理機構による協議の申入れ

第三十五条 農業委員会は、第三十二条第一項又は第三十三条第一項の規定による利用意向調査を行つた場合において、これらの利用意向調査に係る農地(農業振興地域の整備に関する法律第六条第一項の規定により指定された農業振興地域の区域内のものに限る。次条第一項及び第四十一条第一項において同じ。)の所有者等から、農地中間管理事業を利用する意思がある旨の表明があつたときは、農地中間管理機構に対し、その旨を通知するものとする。

 前項の規定による通知を受けた農地中間管理機構は、速やかに、当該農地の所有者等に対し、その農地に係る農地中間管理権の取得に関する協議を申し入れるものとする。ただし、その農地が農地中間管理事業の推進に関する法律第八条第一項に規定する農地中間管理事業規程において定める同条第二項第一号に規定する基準に適合しない場合において、その旨を農業委員会及び当該農地の所有者等に通知したときは、この限りでない。

農地中間管理権の取得に関する協議の勧告

第三十六条 農業委員会は、第三十二条第一項又は第三十三条第一項の規定による利用意向調査を行つた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、これらの利用意向調査に係る農地の所有者等に対し、農地中間管理機構による農地中間管理権の取得に関し当該農地中間管理機構と協議すべきことを勧告するものとする。ただし、当該各号に該当することにつき正当の事由があるときは、この限りでない。

 当該農地の所有者等からその農地を耕作する意思がある旨の表明があつた場合において、その表明があつた日から起算して六月を経過した日においても、その農地の農業上の利用の増進が図られていないとき。

 当該農地の所有者等からその農地の所有権の移転又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定若しくは移転を行う意思がある旨の表明(前条第一項に規定する意思の表明を含む。)があつた場合において、その表明があつた日から起算して六月を経過した日においても、これらの権利の設定又は移転が行われないとき。

 当該農地の所有者等にその農地の農業上の利用を行う意思がないとき。

 これらの利用意向調査を行つた日から起算して六月を経過した日においても、当該農地の所有者等からその農地の農業上の利用の意向についての意思の表明がないとき。

 前各号に掲げるときのほか、当該農地について農業上の利用の増進が図られないことが確実であると認められるとき。

 農業委員会は、前項の規定による勧告を行つたときは、その旨を農地中間管理機構(当該農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、農地中間管理機構及びその農地の所有者)に通知するものとする。

裁定の申請

第三十七条 農業委員会が前条第一項の規定による勧告をした場合において、当該勧告があつた日から起算して二月以内に当該勧告を受けた者との協議が調わず、又は協議を行うことができないときは、農地中間管理機構は、当該勧告があつた日から起算して六月以内に、農林水産省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該勧告に係る農地について、農地中間管理権(賃借権に限る。第三十九条第一項及び第二項並びに第四十条第二項において同じ。)の設定に関し裁定を申請することができる。

意見書の提出

第三十八条 都道府県知事は、前条の規定による申請があつたときは、農林水産省令で定める事項を公告するとともに、当該申請に係る農地の所有者等にこれを通知し、二週間を下らない期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならない。

 前項の意見書を提出する者は、その意見書において、その者の有する権利の種類及び内容、その者が前条の規定による申請に係る農地について農地中間管理機構との協議が調わず、又は協議を行うことができない理由その他の農林水産省令で定める事項を明らかにしなければならない。

 都道府県知事は、第一項の期間を経過した後でなければ、裁定をしてはならない。

裁定

第三十九条 都道府県知事は、第三十七条の規定による申請に係る農地が、前条第一項の意見書の内容その他当該農地の利用に関する諸事情を考慮して引き続き農業上の利用の増進が図られないことが確実であると見込まれる場合において、農地中間管理機構が当該農地について農地中間管理事業を実施することが当該農地の農業上の利用の増進を図るため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、農地中間管理権を設定すべき旨の裁定をするものとする。

 前項の裁定においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

 農地中間管理権を設定すべき農地の所在、地番、地目及び面積

 農地中間管理権の内容

 農地中間管理権の始期及び存続期間

 借賃

 借賃の支払の相手方及び方法

 第一項の裁定は、前項第一号から第三号までに掲げる事項については申請の範囲を超えてはならず、同号に規定する存続期間については四十年を限度としなければならない。

 都道府県知事は、第一項の裁定をしようとするときは、あらかじめ、都道府県機構の意見を聴かなければならない。ただし、農業委員会等に関する法律第四十二条第一項の規定による都道府県知事の指定がされていない場合は、この限りでない。

裁定の効果等

第四十条 都道府県知事は、前条第一項の裁定をしたときは、農林水産省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を農地中間管理機構及び当該裁定の申請に係る農地の所有者等に通知するとともに、これを公告しなければならない。当該裁定についての審査請求に対する裁決によつて当該裁定の内容が変更されたときも、同様とする。

 前条第一項の裁定について前項の規定による公告があつたときは、当該裁定の定めるところにより、農地中間管理機構と当該裁定に係る農地の所有者等との間に当該農地についての農地中間管理権の設定に関する契約が締結されたものとみなす。

 民法第二百七十二条ただし書(永小作権の譲渡又は賃貸の禁止)及び第六百十二条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)の規定は、前項の場合には、適用しない。

所有者等を確知することができない場合における農地の利用

第四十一条 農業委員会は、第三十二条第三項(第三十三条第二項において読み替えて準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による公示をした場合において、第三十二条第三項第三号に規定する期間内に当該公示に係る農地(同条第一項第二号に該当するものを除く。)の所有者等から同条第三項第三号の規定による申出がないとき(その農地(その農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その権利)が数人の共有に係るものである場合において、当該申出の結果、その農地の所有者等で知れているものの持分が二分の一を超えないときを含む。)は、農地中間管理機構に対し、その旨を通知するものとする。この場合において、農地中間管理機構は、当該通知の日から起算して四月以内に、農林水産省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該農地を利用する権利(以下「利用権」という。)の設定に関し裁定を申請することができる。

 第三十八条及び第三十九条の規定は、前項の規定による申請があつた場合について準用する。この場合において、第三十八条第一項中「にこれを」とあるのは「で知れているものがあるときは、その者にこれを」と、第三十九条第一項及び第二項第一号から第三号までの規定中「農地中間管理権」とあるのは「利用権」と、同項第四号中「借賃」とあるのは「借賃に相当する補償金の額」と、同項第五号中「借賃の支払の相手方及び」とあるのは「補償金の支払の」と読み替えるものとする。

 都道府県知事は、前項において読み替えて準用する第三十九条第一項の裁定をしたときは、農林水産省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を農地中間管理機構(当該裁定の申請に係る農地の所有者等で知れているものがあるときは、その者及び農地中間管理機構)に通知するとともに、これを公告しなければならない。当該裁定についての審査請求に対する裁決によつて当該裁定の内容が変更されたときも、同様とする。

 第二項において読み替えて準用する第三十九条第一項の裁定について前項の規定による公告があつたときは、当該裁定の定めるところにより、農地中間管理機構は、利用権を取得する。

 農地中間管理機構は、第二項において読み替えて準用する第三十九条第一項の裁定において定められた利用権の始期までに、当該裁定において定められた補償金を当該農地の所有者等のために供託しなければならない。

 前項の規定による補償金の供託は、当該農地の所在地の供託所にするものとする。

 第十六条の規定は、第四項の規定により農地中間管理機構が取得する利用権について準用する。この場合において、同条中「その登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があつた」とあるのは、「その設定を受けた者が当該農地の占有を始めた」と読み替えるものとする。

措置命令

第四十二条 市町村長は、第三十二条第一項各号のいずれかに該当する農地における病害虫の発生、土石その他これに類するものの堆積その他政令で定める事由により、当該農地の周辺の地域における営農条件に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認める場合には、必要な限度において、当該農地の所有者等に対し、期限を定めて、その支障の除去又は発生の防止のために必要な措置(以下この条において「支障の除去等の措置」という。)を講ずべきことを命ずることができる。

 前項の規定による命令をするときは、農林水産省令で定める事項を記載した命令書を交付しなければならない。

 市町村長は、第一項に規定する場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、自らその支障の除去等の措置の全部又は一部を講ずることができる。この場合において、第二号に該当すると認めるときは、相当の期限を定めて、当該支障の除去等の措置を講ずべき旨及びその期限までに当該支障の除去等の措置を講じないときは、自ら当該支障の除去等の措置を講じ、当該措置に要した費用を徴収する旨を、あらかじめ、公告しなければならない。

 第一項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命ぜられた農地の所有者等が、当該命令に係る期限までに当該命令に係る措置を講じないとき、講じても十分でないとき、又は講ずる見込みがないとき。

 第一項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命じようとする場合において、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなお当該支障の除去等の措置を命ずべき農地の所有者等を確知することができないとき。

 緊急に支障の除去等の措置を講ずる必要がある場合において、第一項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずるいとまがないとき。

 市町村長は、前項の規定により同項の支障の除去等の措置の全部又は一部を講じたときは、当該支障の除去等の措置に要した費用について、農林水産省令で定めるところにより、当該農地の所有者等に負担させることができる。

 前項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条及び第六条の規定を準用する。

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