1968年の十勝沖地震の被害により、鉄筋コンクリート柱の不適切なせん断設計が露呈しました。この被害を受け、1971年に鉄筋コンクリート造の柱のせん断設計法を変更する等の建築基準法施行令の改正が行われています。
1978年の宮城県沖地震の被害を踏まえ、1981年に建築基準法の耐震基準が改正されました。新耐震基準は1981年6月1日から施行され、2024年現在でも適用されています。
耐震改修促進法は、1995年の阪神淡路大震災で新耐震基準に適合しない建物の倒壊等による圧迫死が多数発生したことを受けて、既存建物の耐震化を進めることを目的として制定された法律です。2013年の改正では、1981年(昭和56年)5月31日以前に新築工事に着手した要緊急安全確認大規模建築物及び要安全確認計画記載建築物について、所定の期限までに耐震診断の実施とその結果の報告をすることが義務付けられました。
共同住宅である賃貸住宅のうち、耐震改修促進法の規制対象となる「特定既存耐震不適格建築物」に該当するのは、1981年(昭和56年)5月31日以前に新築工事に着手し、かつ「階数3以上かつ1,000㎡以上」の規模を要する建物に限られます。これらの賃貸住宅には耐震診断の実施が義務付けられています。しかし、耐震改修は努力義務であるため、行うことが義務となっているわけではありません。
雨水による漏水は、屋上や屋根の防水部分の劣化や破損、コンクリート等の構造部材のクラックや破損、タイルの剥がれや破損、窓の目地やコーキングの劣化、ガスレンジや換気扇からの侵入などによって生じます。
建物内部の漏水は、雨水か入居者の過失・不注意によるものの他、給水管や排水管などの設備の接続部分の劣化を原因とするもの、建物の構造上の問題を原因をするものもあります。
雨樋に蓄積した落ち葉などが詰まると、降雨時にオーバーフロー(排水能力不足によるあふれ)が発生し、軒天や破風部に水が回ってしまうことがあります。これにより、建物全体の劣化が進み、外壁や屋根などに損傷を引き起こすおそれがあります。
入居者の不注意等による漏水として、洗濯水のあふれ、流し台や洗面台の排水ホースの外れ、トイレの詰まり放置、シャワーの閉め忘れ、排水溝にたまったゴミによる排水不良などによるものなどがあります。
傾斜屋根には、金属屋根、スレート屋根などがあり、経年劣化により屋根表面にコケカビ等が発生したり、塗膜の劣化による色あせ等が起きたりするので、概ね10年前後での表面塗装の補修が必要である。
傾斜屋根では、屋根の表面にコケカビ等が発生したり、塗膜の劣化による色あせ・錆による美観の低下が生じたりすることがあるため、およそ10年おきに表面塗装のメンテナンスが必要となります。
陸屋根は平らな形状のため、風で運ばれた土砂が堆積したり、落ち葉やゴミが排水口等をふさぐことがあります。それらが原因で屋上の防水機能が低下し、建物に水漏れのリスクが生じるおそれがあります。
ルーフバルコニーでは、太陽熱や紫外線、雨などが原因となり、防水面の膨れや亀裂、立ち上がりのシーリングの劣化などが発生するので定期的な点検や補修が必要となります。また、排水溝(ルーフドレン)がふさがれていないかも点検する必要があります。
制振(制震)構造とは、地震エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収する制震部材(ダンパー)を設置することにより、地震の揺れを低減、制御する構造です。
超高層ビルや塔状の建物では、強風で上層階が揺れることがあり風揺れと呼ばれています。制振(制震)構造は、制振ダンパーの働きで上階の風揺れを緩和させられることから、超高層の建物や搭状の建物の耐震補強方法としては有力な候補となります。
免震構造は、基礎と建物本体との間に免震ゴムなど免震装置を設置して、地震の揺れが建物に直接伝わらないようにすることで、地震の揺れを低減する構造のことをいいます。
免震構造の免震装置部分は、定期的な点検と維持管理が必要です。マンションやビルなどの建物の免震装置の点検は法的義務ではありませんが、定期的な点検の実施が推奨されています。
壁式鉄筋コンクリート造は、柱が存在せず、耐力壁、床スラブ、壁張りから構成される構造で、低層集合住宅で使われています。
主に上層階で起こる屋上や屋根からの雨水の浸入は、防水部材の劣化や破損、コンクリート等の構造部材のクラックや破損によって生じます。これらは経年劣化による場合が多く、損傷が全体に広がっていることも多いので、一般的には部分補修で漏水を止めることは難しいとされています。
出窓は壁から突き出している構造のため、他の部分に比べて雨風や日光の浸食を受けやすい箇所です。出窓からの雨水の浸入は、出窓の屋根と外壁とがつながる部分やサッシ周りのスキマ、天井板の劣化が主な原因であることが多くなっています。
外壁がタイル張りの場合は、タイルの剥がれやクラック、目地やコーキングの劣化に起因する漏水が多いです。
換気扇の排気口は外とつながっているため、雨風が強い場合には換気扇を経由して室内に雨水が浸入することもあります。
タイル外壁やモルタル外壁の劣化は、目視で確認するほか、外壁の近辺にタイルなどが剥落しているかの確認、住民に対して落ちたことがあるかなどのヒアリングをすることによっても確認できることがあります。
外壁部材の塗装面が長期にわたり紫外線を浴びると、塗膜成分が分解されチョーキングという白い粉が外壁の表面に付着するようになります(白亜化)。これが起こると外壁の劣化が始まっているサインとなります。白亜化が生じているかどうかは、外壁の表面を手で触ることによって確認することができます。
外壁面の浮きやひび割れから雨水が侵入することにより、モルタルやコンクリート中のセメントの石灰等が水に溶けだし、空気中の炭酸ガスと化合して白く結晶化すると、部材の表面が白色化してきます(白華現象)。白華現象が生じているかどうかは、表面や目地部などを目視することによって確認することができます。
共用玄関の照明設備は、その内側の床面において概ね50ルクス以上、その外側の床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度をそれぞれ確保することができるものとするとされています。
木造において、基礎と土台、柱と梁を金物で緊結して補強するのは、耐震改修方法として有効です。
木造において、壁や開口部を構造パネルや筋かい等で補強するのは、耐震改修方法として有効です。
木造において、地震力を吸収する制震装置(ダンパー)を取り付けるのは、耐震改修方法として有効です。
鉄筋コンクリート造において、耐震壁や筋かいを増設する耐震改修方法として有効です。
賃貸住宅の修繕は長期にわたるので、計画的に修繕を進めるためにも建物の修繕履歴情報を記録することが必要です。建物の修繕履歴情報を活用することで必要十分な維持修繕計画の立案ができるので、建物の維持保全にかかる費用の無駄を省くことに役立ちます。
定期報告の対象となる建築物は、特殊建築物のうち政令で定めるものと特定建築物で特定行政庁が指定するものです。集合住宅は「下宿、共同住宅、寄宿舎」として特殊建築物になるので、定期報告の対象となります(建築基準法12条1項)。
タイル張り外壁には、接着剤張り、モルタル張り、PC先付け工法、乾式工法がありますが、乾式工法については全面打診による調査はできず目視での確認となります。
陸屋根は傾斜のないフラット形状の屋根です。土砂や落ち葉、ゴミ等が排水口をふさいでしまうと、屋上に雨水が溜まり、防水の性能に影響を与え、漏水の原因にもなることがあります。
傾斜屋根(カラーベスト等)は、夏の温度上昇、冬の温度低下の繰り返しにより、素地自体の変形やゆがみ等が発生することがあり、割れや雨漏りの原因となることがあります。
錆は鉄に酸素が結合したものなので、酸素の分だけ鉄筋の体積が増すことになります。この体積増加が進むとコンクリートが内部から爆裂する危険性があります。したがって、コンクリート打ち放しの外壁は、鉄筋発錆に伴う爆裂を点検し、必要に応じて改修を行う必要があります。
マンションなどの漏水は上の階の給水管が原因の場合もあるため、上の階の居住者に協力してもらい、給水を止めて原因を特定することが必要です。
応急危険度判定は、被災した市町村に設置された災害対策本部からの要請によって実施される事が一般的です。
壁式鉄筋コンクリート造の建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める件として、建築基準法施行令により規定されています。また、壁式鉄筋コンクリート造は柱や梁を設けず、基本的に壁だけで荷重を支えるような鉄筋コンクリート構造であるため、建物の内部空間が広く使用できるというメリットがあります。
耐力壁と剛床を強固に一体化した箱型構造であり、フレーム状に組まれた木材に構造用合板を打ち付けた壁や床(面材)で支えます。そのため、高い耐震性・耐火性・断熱性・気密性・防音性をもつといわれています。
最近の建築物には工場で生産された部材が多く用いられていますが、プレハブ工法は、従来の建築工法に比べて工場生産の部材を利用する割合が大きい工法に対して用いられます。工場での品質管理のもとで部材を生産するため、品質が一定で、高い精度を確保でき、建築現場での作業が軽減され、工期が短縮される傾向にあります。
特定建築物の所有者、管理者は定期的に一級建築士等に調査・検査をさせ、その結果を特定行政庁に報告する必要があります。
特定建築物の定期調査・検査は、一級建築士又は二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者に実施させる必要があります。一級建築士に限定されているわけではありません。
特定建築物に関する報告の主な調査内容は、敷地、構造、防火、避難の4項目となっています。地方自治体により詳細報告内容が異なっていますので、それぞれの定期報告書を確認してください。
特定建築物の共同住宅の定期調査報告は、3年ごとに行う義務があります。なお、劇場、映画館などは毎年報告する義務があります。
特定既存耐震不適格建築物の所有者には、耐震診断を行い、診断の結果、地震に対する安全性の向上を図る必要があると認められるときは、耐震改修を行うよう努める義務があります(法14条1項)。
昭和56年(1981年)5月31日以前に新築の工事に着手した旧耐震基準の賃貸住宅(共同住宅に限る)は、全てが特定既存耐震不適格建築物ではなく、階数3以上かつ1,000㎡以上のものが要件となっています(法施行令6条2項3号)。
タイルの剥がれやクラック(ひび割れ)、防水などのためにタイルの継ぎ目や隙間を埋めたコーキング材の劣化等により漏水が発生します。
鉄骨造は、鋼材の加工性が良く工期が短く省力化が可能というメリットがあります。一方で風・地震などによる揺れの影響を受けやすいというデメリットがあります。
鉄骨鉄筋コンクリート造は、耐震性に優れていますが、鉄筋コンクリート造に比べ工期が長く、施工の難易度も高いというデメリットがあります。
鉄筋コンクリート造は、耐火・耐久性に富んでいるのと設計の自由度が高いことがメリットですが、建物重量が重いため地震による影響が大きいことがデメリットです。