建築基準法では、①特殊建築物、②一定規模以上の建築物、③無窓の居室を有する建築物、④調理室等を有する建築物等について、火災発生による建物内部の延焼を防ぐため、用途や規模に応じた内装制限を行っています(建築基準法35条の2)。共同住宅である賃貸住宅は、特殊建築物に該当しますから、一定規模以上になると内装制限が適用されることとなります。
防火設備とは、防火区画を構成するために備え付けられた、扉、シャッター、窓、袖壁などを指します。維持管理ではこれらの機能を阻害しないように注意する必要があります。
防火区画は、一定条件を満たす建築物について、火災発生時に炎や煙が建物全体に広がることを防ぐために、建物内を一定以下の床面積ごとに(準)耐火構造の床や壁、または(特定)防火設備で区切ることを義務付ける規制です。防火区画には、面積区画、高層区画、竪穴区画、異種用途区画があります(建築基準法令112条)。
面積区画
建築物の床面積によって区画面積を制限する
高層区画
消火活動が困難となる建築物の11階以上の部分の区画面積を制限する
竪穴区画
階段や吹き抜け構造など竪穴空間を他の部分と区画する
異種用途区画
耐火・準耐火建築物としなければならない建築物の部分を他の部分と区画する
建物の主要構造部とは、壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいいます。建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分は、主要構造部には含まれません(建築基準法2条5項)。
定期報告の義務者は原則として所有者ですが、所有者と管理者が異なる場合には管理者に報告の義務があります。
定期報告の時期は、建築物の用途、構造、延べ面積等に応じて、おおむね6月から3年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期とされています。
共同住宅では、災害発生時に短時間で直通階段まで行けるよう、居室から直通階段までの歩行距離の制限があります。歩行距離の限度は、建物の構造と回数によって異なり30mから60mとなっています。
共同住宅において、居室のある階に2以上の直通階段を設けなければならないのは以下の場合です。バルコニーや屋外通路の設置による緩和規定があるので、あくまで原則的な規定です。
6階以上
規模によらず2つ以上必要
5階以下
主要構造部が耐火構造・準耐火構造・不燃材料の場合はその階の居室の床面積合計が200㎡超、それ以外はその階の居室の床面積合計が100㎡超
共同住宅では、プライバシーを確保することを目的に、天井等を迂回して聞こえる他の部屋の生活音を低減するために、原則として隣の部屋と隔てる壁(界壁)を小屋裏または天井裏まで延ばした構造にしなければなりません。ただし、部屋の天井が界壁と同等の遮音性能を持つものであれば、天井を迂回する音を防げるため天井裏等まで達しなくても良いとされています。
内装にホルムアルデヒドを発散する建材を使用しない場合でも、家具からの発散があるため、原則として全ての新築建物に機械換気設備の設置が義務付けられています。
居室外から居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐ措置は、①建材による措置、②気密層・通気止めによる措置、③換気設備による措置のいずれかが必要となります。すべての措置が必要というわけではありません。
居室の種類及び換気回数に応じて、内装の仕上げに使用するホルムアルデヒド発散建築材料の面積は制限されています。規制対象となる内装の仕上げ材には、合板、フローリング、断熱材、接着剤、塗料などが含まれます(告示第1414号)。
居室とは、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室であり、便所は除かれます(建築基準法2条4号)。
居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければなりません(建築基準法28条2項)。
共同住宅では、その階における居室の床面積の合計が100平方メートル(耐火、準耐火構造の場合は200平方メートル)を超える場合は、避難するための直通階段を2つ以上設けなければならない。
いわゆるロフトと呼ばれる、天井高が1.4m以下、かつ、設置される階の床面積の2分の1未満である、はしご等が固定式ではないなどの基準を満たした小屋裏物置は、床面積に算入されません(建設省住指発682号)。
小屋裏物置は、小屋裏、天井裏等の建築物の余剰空間で内部から利用するものであり、用途については収納のための物置等に限定されます。居室としての利用が予想されるものはロフト部分とは認められません。
採光規定は事務所や店舗用の建築物に対しては適用されません。商業地域にある店舗や事務所等は建ぺい率の問題もあり、採光の確保が難しい事も挙げられます。
住戸の床面積の合計が100㎡を超える階では、両側に居室のある場合には、1.6m以上の廊下の幅が必要とされる。片側廊下の場合には、1.2m以上の廊下の幅が必要とされる。
直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える階では、120㎝以上の階段の幅が必要です。屋外階段は90㎝以上の階段の幅が必要です。
住居系の用途地域には8種類があり、建ぺい率は、30%から80%の範囲で指定されます。
商業系の用途地域には近隣商業地域・商業地域の2種類があり、建ぺい率は、60%から80%の範囲で指定されます。
工業系の用途地域には準工業地域・工業地域・工業専用地域の3種類があり、建ぺい率は、30%から80%の範囲で指定されます。
建築基準法改正により、平成15年7月1日以降に着工する建物は、内装の仕上げなど居室のある建築物に対してシックハウス対策が義務づけられました。
居室を有する建築物を建築する場合には、クロルピリホス及びホルムアルデヒドを含む建築材料の使用制限を受けます。
建材や壁紙を貼る為の接着剤、持ち込まれた家具からホルムアルデヒド等の化学物質が発散される可能性があります。