賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
(誇大広告等の禁止)
第28条 特定転貸事業者又は勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう。以下同じ。)(以下「特定転貸事業者等」という。)は、第二条第五項に規定する事業に係る特定賃貸借契約の条件について広告をするときは、特定賃貸借契約に基づき特定転貸事業者が支払うべき家賃、賃貸住宅の維持保全の実施方法、特定賃貸借契約の解除に関する事項その他の国土交通省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

(1) 規定の趣旨

サブリース業者自身又は勧誘者が行うマスターリース契約の締結を促す広告において、オーナーとなろうとする者が賃貸事業の経験・専門知識が乏しいことを利用し、サブリース業者が支払うべき家賃やマスターリース契約の解除の条件等を明らかにせず、メリットのみを強調して、賃貸事業のリスクを小さく見せる表示等を行った場合、オーナーとなろうとする者は、広告の内容の真偽を判断することは困難であり、契約の内容等を誤認したままマスターリース契約を締結することで、甚大な損害を被ることとなる。 このため、賃貸住宅管理業法においては、サブリース業者又は勧誘者(以下「サブリース業者等」という。)が、マスターリース契約に基づいてサブリース業者が支払うべき家賃、賃貸住宅の維持保全の実施方法、マスターリース契約の解除に関する事項等について、著しく事実に相違する表示又は実際のものよりも著しく優良あるいは有利であるような表示を行う行為について禁止している。

(2) 「誇大広告等」について

「誇大広告等」とは、実際より優良であると見せかけて相手を誤認させる「誇大広告」のほか、虚偽の表示により相手を欺く「虚偽広告」についても本条が適用される。 また、広告の媒体は、新聞の折込チラシ、配布用のチラシ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ又は インターネットのホームページ等種類を問わない。特に、営業所等が作成する配布用のチラシやインターネットのホームページ等において適切な表示がなされているかについて、社内において遵守状況の確認を行うことが重要である。

(3) 誇大広告等をしてはならない事項

法第28条及び省令第3条において、サブリース業者等は、マスターリース契約の条件について広告をするときは、以下の事項について、広告に記載されている内容が事実と著しく相違し、又は実際のものよりも著しく優良であり若しくは有利であるとオーナーとなろうとする者を誤認させるような表示をしてはならないと定めている。 サブリース業者等が行う広告は、オーナーとなろうとする者への賃貸経営の勧誘の導入部分に当たり、明瞭かつ正確な表示による情報提供が、適正な勧誘を確保するために重要である。そのためには、各事項について、それぞれ以下に挙げる点に特に留意が必要である。

サブリース業者がオーナーに支払うべき家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項

サブリース業者がオーナーに支払う家賃の額、支払期日、その支払方法、当該額の見直しがある場合はその見直し時期、借地借家法第32条に基づく家賃の減額請求権及び利回り

【留意事項】

  • 広告において「家賃保証」「空室保証」など、空室の状況にかかわらず一定期間、一定の家賃を支払うことを約束する旨等の表示を行う場合は、「家賃保証」等の文言に隣接する箇所に、定期的な家賃の見直しがある場合にはその旨及び借地借家法第 32 条の規定により減額されることがあることを表示すること。
  • 表示に当たっては、文字の大きさのバランス、色、背景等から、オーナー等が一体として認識できるよう表示されているかに留意する。
  • マスターリース契約に係る賃貸経営により、確実に利益を得られるかのように誤解させて、投資意欲を不当に刺激するような表示をしていないこと。特に、実際にはマスターリース契約において利回りを保証するわけではないにもかかわらず、「利回り○%」とのみ記載し、利回りの保証がされると誤解させるような表示をしていないこと。

賃貸住宅の維持保全の実施方法

サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の内容、頻度、実施期間等

【留意事項】

  • 実際には実施しない維持保全の内容の表示をしていないこと。
  • 実施しない場合があるにもかかわらず、当然にそれらの内容が実施されると誤解させるような表示をしていないこと。

賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項

維持保全の費用を負担する者及び当該費用に関するサブリース業者とオーナーの負担割合

【留意事項】

  • オーナーが支払うべき維持保全の費用について、実際のものよりも著しく低額であるかのように誤解させるような表示をしていないこと。

マスターリース契約の解除に関する事項

契約期間、契約の更新時期及び借地借家法第28条に基づく更新拒絶等の要件

【留意事項】

  • 契約期間中であっても業者から解約することが可能であるにも関わらず、契約期間中に解約されることはないと誤解させるような表示をしていないこと。特に、広告において、「○年間借り上げ保証」など、表示された期間に解約しないことを約束する旨の表示を行う場合は、当該期間中であっても、業者から解約をする可能性があることや、オーナーからの中途解約条項がある場合であっても、オーナーから解約する場合には、借地借家法第28条に基づき、正当な事由があると認められる場合でなければすることができないことを表示すること。
  • また、オーナーが更新を拒絶する場合には、借地借家法第28条が適用され、オーナーからは正当事由がなければ解約できないにもかかわらず、オーナーから自由に更新を拒絶できると誤解させるような表示をしていないこと。

(4) 広告の表示に関する留意事項

明確かつ正確な表示を確保するためには、上記に挙げた個別の事項に関する留意事項の他、マスターリース契約の長所に係る表示のみを強調し、短所に係る表示が目立ちにくい表示を行っていないかについても留意が必要である。 例えば、マスターリース契約のオーナーとなろうとする者に対し、契約内容等のマスターリース契約に関する取引条件に訴求する方法として、断定的表現や目立つ表現などを使ってマスターリース契約の内容等の取引条件を強調する表示(強調表示)が使われる場面がある。強調表示は、無条件、無制約に当てはまるものとオーナー等に受け止められるため、仮に例外などがあるときは、強調表示からは一般のオーナーとなろうとする者が通常は予期できない事項であって、マスターリース契約を選択するに当たって重要な考慮要素となるものに関する表示(打消し表示)を分かりやすく適切に行わなければならない。打消し表示の内容が正しく認識されるためには、すべての媒体に共通して、以下に留意する必要がある。

  • 表示物の媒体ごとの特徴も踏まえた上で、オーナーとなろうとする者が実際に目にする状況において適切と考えられる文字の大きさで表示されているか。
  • 打消し表示が強調表示の近くに表示されていたとしても、強調表示が大きな文字で表示されているのに対し、打消し表示が小さな文字で表示されており、強調表示に対する打消し表示に気づくことができないような表示になっていないか。
  • 打消し表示が強調表示から離れた場所に表示されており、打消し表示に気づかない又は当該打消し表示がどの強調表示に対する打ち消し表示であるか認識できないような表示となっていないか。
  • 打消し表示の文字と背景との区別がつきにくい表示となっていないか。

さらに、広告媒体に応じて、以下の点に特に留意する必要がある。
(紙面広告)

  • 打消し表示は、強調表示に隣接した箇所に表示した上で、文字の大きさのバランス、色、背景等から両者を一体として認識できるよう表示されているか。 (Web広告(PC・スマートフォン))
  • 強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示しているか。
  • 同一画面にある他の表示と比べて、打消し表示がより注意を引きつける文字の大きさになっているか。
  • 打消し表示は、強調表示に隣接した箇所に表示した上で、文字の大きさのバランス、色、背景等から両者を一体として認識できるよう表示されているか。

(動画広告)

  • 打消し表示が表示される時間が短く、読み終えることができないような表示になっていないか。
  • 強調表示が表示された後、画面が切り替わって打消し表示が表示され、打消し表示に気づかない、又はどの強調表示に対する打消し表示であるか認識できないような表示になっていないか。
  • 文字と音声の両方で表示された強調表示に注意が向けられ、文字のみで表示された打消し表示に注意が向かないような表示になっていないか。

また、体験談を用いる場合は、賃貸住宅経営は、賃貸住宅の立地等の個別の条件が大きな影響を与えるにも関わらず、体験談を含めた表示全体から、「大多数の人がマスターリース契約を締結することで同じようなメリットを得ることができる」という認識を抱いてしまうことから、体験談とは異なる賃貸住宅経営の実績となっている事例が一定数存在する場合等には、「個人の感想です。経営実績を保証するものではありません」といった打消し表示が明瞭に記載されていたとしても、問題のある表示となるおそれがあるため、体験談を用いることは、第28条違反となる可能性がある。

(5)「著しく事実に相違する表示」について

「事実に相違する」とは、広告に記載されている内容が実際のマスターリース契約の内容と異なることを指す。具体的に何が「著しく」に該当するかの判断は、個々の広告の表示に即してなされるべきであるが、オーナーとなろうとする者が、広告に記載されていることと事実との相違を知っていれば通常、そのマスターリース契約に誘引されないと判断される場合は「著しく」に該当し、単に、事実と当該表示との相違することの度合いが大きいことのみで判断されるものではない。 なお、「著しく事実に相違する表示」であるか否かの判断に当たっては、広告に記載された一つ一つの文言等のみからではなく、表示内容全体からオーナーとなろうとする者が受ける印象・認識により総合的に判断される。

(6)「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは著しく有利であると人を誤認させるような表示」について

「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」と 認められるものとは、マスターリース契約の内容等についての専門的知識や情報を有していないオーナーを誤認させる程度のものをいう。 なお、「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させる表示」であるか否かの判断に当たっては、広告に記載された一つ一つの文言等のみからではなく、表示内容全体からオーナーとなろうとする者が受ける印象・認識により総合的に判断される。

(7) 具体例

以下に、著しく事実に相違する表示又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示に該当すると考えられる場合を例示する。誇大広告等にあたるかどうかは、例示されていないものも含め、個別事案ごとに客観的に判断されることに留意する必要がある。

以下に、著しく事実に相違する表示又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示に該当すると考えられる場合を例示する。誇大広告等にあたるかどうかは、例示されていないものも含め、個別事案ごとに客観的に判断されることに留意する必要がある。

【具体例】

サブリース業者がオーナーに支払う家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項

  • 契約期間内に定期的な家賃の見直しや借地借家法に基づきサブリース業者からの減額請求が可能であるにもかかわらず、その旨を表示せず、「○年家賃保証!」「支払い家賃は契約期間内確実に保証!一切収入が下がりません!」といった表示をして、当該期間家賃収入が保証されているかのように誤解されるような表示をしている
  • 「○年家賃保証」という記載に隣接する箇所に、定期的な見直しがあること等のリスク情報について表示せず、離れた箇所に表示している
  • 実際は記載された期間より短い期間毎に家賃の見直しがあり、収支シミュレーション通りの収入を得られるわけではないにも関わらず、その旨や収支シミュレーションの前提となる仮定(稼働率、家賃変動等)を表示せず、〇年間の賃貸経営の収支シミュレーションを表示している
  • 実際は記載の期間より短い期間で家賃の改定があるにもかかわらず、オーナーの声として〇年間家賃収入が保証されるような経験談を表示している
  • 広告に記載された利回りが実際の利回りを大きく上回っている
  • 利回りを表示する際に、表面利回りか実質利回りかが明確にされていなかったり、表面利回りの場合に、その旨及び諸経費を考慮する必要がある旨を表示していない
  • 根拠を示さず、「ローン返済期間は実質負担0」といった表示をしている
  • 根拠のない算出基準で算出した家賃をもとに、「周辺相場よりも当社は高く借り上げます」と表示している
  • 「一般的な賃貸経営は2年毎の更新や空室リスクがあるが、サブリースなら不動産会社が家賃保証するので安定した家賃収入を得られます。」といった、サブリース契約のメリットのみを表示している

賃貸住宅の維持保全の実施方法

  • 実際にはサブリース業者が実施しない維持保全の業務を実施するかのような表示をしている
  • 実際は休日や深夜は受付業務のみ、又は全く対応されないにもかかわらず、「弊社では入居者専用フリーダイヤルコールセンターを設け、入居者様に万が一のトラブルも24時間対応しスピーディーに解決します」といった表示をしている

賃貸住宅の維持保全の費用の分担に関する事項

  • 実際には毎月オーナーから一定の費用を徴収して原状回復費用に当てているにも関わらず、「原状回復費負担なし」といった表示をしている
  • 実際には、大規模修繕など一部の修繕費はオーナーが負担するにも関わらず、「修繕費負担なし」といった表示をしている ・修繕費の大半がオーナー負担にもかかわらず、「オーナーによる維持保全は費用負担を含め一切不要!」といった表示をし、オーナー負担の表示がない
  • 維持保全の費用について、一定の上限額を超えるとオーナー負担になるにもかかわらず、「維持保全費用ゼロ」といった表示をしている
  • 維持保全の費用について、実際には、他社でより低い利率の例があるにもかかわらず「月々の家賃総額のわずか○%という業界随一のお得なシステムです」といった表示をしている
  • 実際には客観的な根拠がないにもかかわらず、「維持保全の費用は他社の半分程度で済みます」といった表示をしている
  • 月額費用がかかるにもかかわらず、「当社で建築、サブリース契約を結ばれた場合、全ての住戸に家具家電を設置!入居者の負担が減るので空室リスクを減らせます!」と表示し、月額費用の表示がない

マスターリース契約の解除に関する事項

  • 契約期間中であっても業者から解約することが可能であるにも関わらずその旨を記載せずに、「30年一括借り上げ」「契約期間中、借り上げ続けます」「建物がある限り借り続けます」といった表示をしている
  • 実際には借地借家法が適用され、オーナーからは正当事由がなければ解約できないにもかかわらず、「いつでも自由に解約できます」と表示している
  • 実際には、契約を解除する場合は、月額家賃の数か月を支払う必要があるにもかかわらずその旨を記載せずに、「いつでも借り上げ契約は解除できます」と表示している

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