法令上の制限の目的は、土地・建物の有効利用の実現にあります。
地価が高騰しすぎると、土地・建物の有効利用が困難になるので、これを引き下げる必要があります。
そこで、国土利用計画法は許可制や届出制を設けました。

届出制と監視区域

※事後届出制においては、一団の土地を分割して買う場合には届出が必要だが、分割された一団の
土地の一部を取得する場合(造成された分譲宅地の1 区画を取得する場合・マンション分譲の場
合等)には届出は不要です。

国土利用計画法でいう「土地売買等の契約」にあたるか?

土地売買等の契約の意義

① 土地に関する権利であること

該当する例該当しない例
⑴ 所有権
⑵ 地上権
⑶ 賃借権
⑷ 譲渡担保
⑴ 地役権
⑵ 永小作権
⑶ 質権
⑷ 抵当権等

② 土地に関する権利の移転・設定が対価を得て行われること

該当する例該当しない例
対価は、金銭に限らない。それゆえ 交換・代物弁済・代物弁済の予約も 含まれます⑴ 設定の対価(権利金)を伴わない賃借権・地上権の設定
⑵ 使用貸借
⑶ 相続
⑷ 贈与
⑸ 信託契約

③ 契約(予約も含む)であること。一方的な意思表示は契約ではありません

該当する例該当しない例
⑴ 売買
⑵ 売買の予約
➡ この段階で届出が必要
⑴ 換地処分
⑵ 予約完結権の行使
➡ 予約の際、届出をすれば足ります

①②… 地価高騰に結びつく危険のある取引のみが規制の対象となります。賃借権も
賃料が地価に影響します。
③…… 当事者間の契約でなければ、当事者間の自由な意思に基づくものといえず、
投機的取引と評価しえないから。

契約の対象となる土地は一定面積以上か?

届出の対象区域

何ら指定されていない区域・注視区域
① 市街①化区域内 ➡ 2,000㎡以上
② 上記①以外の都市計画区域内 ➡ 5,000㎡ 以上の取引をする場合
③ 都市計画区域外 ➡ 10,000㎡(=1ha)以上
何筆かに分けて土地が取引される場合には、全体で上記要件をみたすかどうかを判断します。

監視区域内
都道府県知事が定める面積以上の取引をする場合

届出

届出不要の場合
① 土地売買等の契約にあたらない場合
② 一定面積にみたない取引の場合
③ 規制区域内に所在する土地に関する場合 ➡ 許可制
民事調停法に基づく調停、競売により土地売買の契約が締結される場合
 理由:裁判所が関与する以上、対価は適正なものと考えられるから。
⑤ 当事者の一方または双方が国または地方公共団体の場合
 理由:国・地方公共団体が相手となる以上、対価は適正なものと考えられるから。
⑥ 農地法第3 条第1 項(権利移動)の許可を受けた場合には、届出は不要です。
これに対し、農地法第5 条第1 項(転用目的権利移動)の許可を受けた場合には、
さらに国土法の届出も必要です。

届出をしない場合
6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金。
なお、届出しなくても契約の効力に影響はない。

審査対象

無指定区域注視区域・監視区域
❶ 利用目的についてのみ審査する。
取引価格について指導・勧告等をすることはありません
❷ 利用目的が公表されている土地利用に関する計画に適合しない場合には、利用目的の変更を勧告することがあります
取引価格および利用目的について審査します

勧告等

無指定区域注視区域・監視区域
不勧告問題がない場合❶ 問題なし ➡ 通知 ➡ 契約可
❷ 6週間しても通知も勧告もない
➡ 契約可
変更勧告❶ 取引価格については勧告等の
措置はしません
❷ 土地の利用目的について必要
な変更をすべき旨の勧告がで
きます。この勧告は届出の日
から3週間以内にされます
当該土地を含む周辺の地域の適正か
つ合理的な土地利用を図るために著
しい支障があると認められるとき
は、契約の中止等の勧告をすること
ができます
勧告期間届出の日から3週間以内届出の日から6週間以内
(6週間以内は原則契約締結禁止)
その他助言制度
知事は土地の利用目的について
必要な助言をすることができま
助言制度はありません

知事の対応

無指定区域注視区域・監視区域
何について土地の利用目的の変更について契約の中止の勧告について

従う場合
知事は必要があれば土地の権利の処分について、あっせんその他の措置を講じるように
努めなければなりません。

従わない場合
知事は従わない旨および勧告の内容を公表※1 することができます。なお、
従わなくても契約の効力に影響はありません。また、罰則※2 もありません。
※1 公表…社会一般の批判にさらすため。
※2 罰則の比較
① 届出をしない場合
➡ 6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金
② 届出をした日から6 週間を経過せず、かつ、通知、勧告もない間に契約した場合
➡ 50万円以下の罰金
③ 知事の勧告を受けたが従わない場合
➡ 勧告の内容を公表されることはあるが、罰則はない

おすすめの記事